・人手が足りない
・採用しても応募がない
・人がなかなか育たない
今回のd-ジャーナルは、そんな人手不足に悩む中小企業の経営者、人事担当者は必見の内容です。
この人手不足時代、これらの悩みを抱えている経営者は多くいます。
そして、これら同じ悩みを抱えていたとしても、
その悩みに至る問題や抱える課題は企業によって様々です。
それら問題や課題を整理しながら『背伸びをさせる人材育成』について紹介していきます。
人手不足の人の区分
足りない、応募がない、育たない対象となる『人』ですが、具体的にはどのような人材のことでしょうか。
この『人』について区分けすると、その企業の置かれている状況が見えてきます。
次の表で区分けします。
このように、不足している『人』が経営層である場合は事業承継や事業拡大の課題を抱えていたり、スペシャリストの担当者不足である場合は、現場での労働力確保や多い残業時間など労働環境に課題を抱えていたりと、問題となる不足人材の区分により抱えている課題が異なってきます。
人手不足と言えど、解決したい課題は様々ということです。
そして、重要なことは課題の解決です。
つまり、目的は課題解決であって、人手不足解消が唯一の手段ではなく、手段は多様にあるということです。
その一つの手段として、今回ご紹介するものが『背伸びをさせる人材育成』です。
この『背伸びをさせる人材育成』は、どの区分の人材不足においても効果的ですが、今回はより短期間でその効果を得ることのできる担当者不足に焦点をあて説明していきます。
また、この背伸びをさせる担当者育成により、中間管理職の人材不足がもたらす課題の早期解決にもつながります。
背伸びをさせる担当者育成・・・とは
「背伸びをさせる担当者育成」において、背伸びのさせ方は3つあります。
- 1.中間管理職の視野(上位概念や総合的視野)を見せる
- 2.部分最適と全体最適を理解させる
- 3.企業における倫理観を養う
この3つの中でも最も重要なことは、「中間管理職の視野を見せる」ことです。
中間管理職の視野を見せる
上司は新人に仕事を依頼する際、その仕事内容を説明し期限を設ける傾向が強いです。
いわゆる「What」と「How」、そして「When」です。
「いつまでにこの仕事をこんな風に仕上げてみて」という具合にです。
しかし、これでは担当者の成長スピードは担当者任せとなってしまいます。
あの子の育ちは早いが、その子の育ちは遅い、という状況が散見される職場は要注意です。
そこで是非、次のことを説明した上で仕事を依頼してください。
「Why」です。
「今、~~~な状況にあって・・・がとても重要になっている。だから、いつまでにこの仕事をこんな風に仕上げてみてほしい」と依頼するのです。
この「Why」は上位概念であればあるほど良いですし、その範囲が広ければ広いほど効果的です。
つまり、その仕事をマネジメントしている中間管理職の考えていることを全て教えてあげることです。
これが「中間管理職の視野を見せる」ことなのです。
こんなこと、今の新人に説明してもわからない、と思ったら、それはその新人の成長を勝手な思い込みで阻害していることになります。
説明しても分からないはずがないのです。
分からないのであれば、それは説明が上手ではないということです。
とはいえ、与えた仕事に対して取り組むべき姿勢であるだとか、期待するゴールを説明することは、その新人の成長過程で重要だ、と考えている上司もいるでしょう。
これは仕事の質を重視する方の意見ですが、それは間違いではありません。
仕事の質は高ければ高いほど良いものです。
ただ、私が言いたいことは、そこに「Why」についても同じ熱量で説明してあげてほしい、ということです。
というのも、仕事の質はその人自身の熟練度に依存する部分が大きく、その質を期待するということはその担当者自身の成長スピードに期待することになるからです。
しかし、「Why」に関すること、その仕事がなぜ必要なのか、一連のフローの中でどこに位置付けられているのか、どうして今のような仕事形態に至ったのか、などの概念を理解することは、熟練度が無くてもできます。
つまり、担当者の成長スピードに依存することなく、理解させることができるからです。
これは、仕事を依頼する時に限らず、仕事を確認する時や教える時も同様です。
例えば、電気工事業の新人職人をイメージしてください。
新人職人にコンセント器具の取付を説明するとします。
担当者の視野で仕事を依頼した場合、コンセント器具と電線をどのように結線するのか、また、その際の注意事項を説明します。
説明上手な先輩であれば、ポイントに理由を加えて説明するでしょう。
「しっかりと器具付けすること。銅線も見えないようにすること。なぜなら、感電や火災につながるからね。」という具合にです。
しかし、このWhyでは背伸びとしては不十分です。
あくまでも担当者の視野での仕事への理解を深めるための説明になるからです。
中間管理職の視野、上位概念の説明とは、「なぜ今、コンセント器具の取付をお願いしているのか。どのような工程の流れがあり、今がどの状況で、次にどのような段取りが控えているのか。」と、作業の上位にある工程という概念をしっかりと説明することです。
工程表や施工図、設計図などを広げ説明するとより効果的でしょう。
この工程の理解は職人の技術が低くても理解することができます。
だからこそ、担当者自身の成長スピードに依存しない成長を期待することができるのです。
そして、この工程について理解が深まれば、上司からの仕事の依頼が無くても自らその作業の必要性に気付き、自ら作業することができるようになります。
仮に、新たに新人職人が入った場合でも、その新人に仕事指示を与えることができるようになります。
つまり、作業マネジメントができることを意味し、中間管理職の早期人材育成にもつながるということです。
仕事ができなくても物事の理解はできる
当然ながら、新人はすぐには仕事ができません。
経験したことのない仕事なんて誰だってすぐにはできません。
だからこそ、上司は仕事を教えることに集中してしまうのです。
しかし、仕事ができなくても、物事を理解することはできるのです。
学生生活の勉強を思い返してみて下さい。
教科書を読んだり先生の話を聞きながら、分からない多くのことを私たちは理解してきました。
与えた仕事の上位概念や総合的視野を説明し理解させてみてください。
必ず担当者は理解し、視野が高く広い担当者へ成長します。
この上位概念をしっかりと理解させることが担当者の早期成長の秘訣であり、中間管理職への早期成長を促し、人手不足解消の鍵にもなるのです。
中間管理職の視野を持ってさえいれば、翌年に新たに新人が入社したとしても上司として質の高い指導を行うことができます。
この早期育成と早期指導を積み重ねることで、担当者と中間管理職の人手不足という問題は徐々に解決されるのです。
上位概念を理解した上で判断に悩む時に・・・
「①中間管理職の視野を見せる」で上位概念を理解させることができたとします。
しかし、それでも判断に悩む場合があります。
例えば、納期とコストの選択です。
とにかくスピードを重視しリソースを短期的に注ぎ込む判断もあれば、与えられた納期までのスケジューリングを正確に行い適度なリソースで実行する判断もあります。
前者はコスト高となりますが、不測の事態に対する対応余剰が生まれたり、浮いた日数を追加や別の業務に回せたりもします。
後者では余剰は生まれませんが、コストを抑えることができ働き方としての余裕は生まれます。
このように優先順位付けその人その人の価値観によって変わってしまう際に、「②部分最適と全体最適を理解させる」ことと「③企業における倫理観を養う」ことが重要になってきます。
この②と③を理解させることができれば、その人材の個人人格は組織人格により近くなり、企業が求める人材育成、企業文化の浸透などに繋がっていきます。
このように、中間管理職の視野で物事を見ることのできる人材、部分最適と全体最適を理解した上で、企業の倫理観を持って物事を進めることのできる人材を早期に育成させることが背伸び背伸びをさせる人材育成ということです。
これらの人材を早期獲得することで企業の人材基盤は強化されます。
そして、人材の質が向上し、人手不足を引き起こす原因となっている企業問題のいくつかは解決されていることでしょう。
若い人材の限界を企業側が勝手に限定せず、人材の可能性を信じ背伸びをさせる企業が増えることを願っています。
変化に挑むパートナーdarwin
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