進化するセミナー/経営と営業の乖離【2/3】

進化するセミナー/経営と営業の乖離【2/3】

経営と営業の乖離

進化するセミナー
ディスカッション形式で進めるdarwinで好評のセミナー/研修をdジャーナルでも疑似的に学べるように記事にしたものです。実際のディスカッションをベースに仮想の参加者間でディスカッションを繰り広げ、セミナーを疑似体験することで思考をブレイクスルーできます。

なお、登場する企業は実在する企業ですが、偽名を扱いケースも簡略化してあります。

ケース『経営と営業の乖離②』

前回の「進化するセミナー/経営と営業の乖離【1/3】」では、営業担当者を主人公とし営業担当者の心の葛藤に着目することで、経営と営業の乖離の発生原因を垣間見ることができました。

今回は、顧客の立場から経営と営業の乖離の発生原因についてついて探っていきます。

では、ディスカッションのベースとして次の企業のケースを取り上げ、そこからディスカッションを広げていきましょう。

経営と営業の乖離 温泉宿かしま

ディスカッション

温泉宿かしまのような中小企業は多く存在します。業務が複雑に、かつ、都合よくアナログ化されていて、簡単には業務のIT化を進めることができない状態に陥っている企業です。この温泉宿かしまの大竹支配人もまた、その状況に直面し苦しんでいることが見て取れます。

プロジェクトを左右する要因は何か?

講師

皆さんが大竹支配人の立場であれば、このプロジェクトをどのように進めますか?

白川

私であれば、実際にシステムを従業員にも見てもらい、
作業できそうか出来そうにないかを確認します。

講師

多数決を取るということですね。
では、それで意見が分かれたとします。その場合はどうしますか?

白川

う~ん、出来る人がいるのであれば、
従業員間で教え合いができるので、システム導入を進めていいと思います。

講師

他の人はどう思いますか?

吉田

私も白川さんと同じです。
出来る人がいるのであれば、
そのレベルに合わせてシステム導入を進めていくべきです。

大島

私は皆さんが少し営業の立場から考えた意見があるのではないかと思います。
これまでできていた業務がうまくできないようになる影響は大きいと思います。

講師

例えば、どのような影響ですか?

大島

システムに対する苦手意識から従業員の不満度が高まります。
また、ミスをした場合は給与に影響するので、
その業務ミスの責任は他のミスよりも大きいです。

吉田

そこは従業員なので、与えられた業務に対して責任を持つべきと思います。
社会的にIT化は進んでいるので、
従業員もどこかのタイミングでITレベルを高めなければなりません。

講師

ちょっと待って下さい。
吉田さんは初めの質問「これからプロジェクトをどのように進めるか?」
に対してどういう考えでしたか?

吉田

他の数社のシステムを見て、
これだなと思ったシステムを従業員に見てもらいます。

講師

うん、そこで吉田さんは従業員の意見が分かれたとしても、
出来る人がいるならシステムを導入するべきだ、という意見でしたね。

吉田

そうですね。

講師

吉田さんは、
従業員のITレベルを高めるべきという考えもあり、
初めからシステムを導入することに肯定的です。
では、
なぜ従業員にシステムを見てもらう必要があるのですか?

吉田

事前に従業員に対して、
システムを説明し見てもらうことで抵抗感をなくすためです。

大島

この吉田さんの考えが営業の立場だと私は感じます。
今回、大竹支配人は必ずしもシステム導入が
温泉宿かしまにとってプラスに働くとは感じていないと思います。

講師

白川さんはどう思う?

白川

私も大島さんの意見を聞いて、
自分がシステム導入に肯定的な立場だったと感じました。
ただ、
実際に顧客の中には私のようにシステム導入に肯定的な方もいれば、
大竹支配人のように中立な方もいます。

講師

ということは必ずしも、
システム導入に肯定的という考え=営業の立場
とは言えないということですか?

白川

はい。
中には、顧客の状況から判断してシステム導入に否定的な立場をとる営業担当もいると思います。

講師

なるほど。
では、システム導入に肯定的か中立的か否定的かの違いで
プロジェクトの進め方は変化しますか?

大島

今回私たちの意見が分かれたように
プロセスの目的は大きく変わり、進め方も変わるかもしれません。

講師

では、これまでのディスカッションを少し整理しよう。

ディスカッションの整理

今回は、大竹支配人がどのようにプロジェクトを進めるか、というテーマからプロジェクトを進める担当者の心境にまで議論が及びました。

そこで、担当者の心境を考えた時に、大島さんの指摘から営業担当者の観点から考えていたことに気付かされました。

そして、もう一度顧客の立場に立ち返り考えてみると、プロジェクトに肯定的か中立的か否定的かによって、プロジェクトのプロセスとその目的に違いが表れるという考えに至りました。

これが今回の進化するセミナーによって結論づいたプロジェクトを左右する要因の1つです。

もちろん、他にもプロジェクトを左右する要因はあります。darwinワークショップでは、さらにディスカッションを進めていくのですが、今回の『進化するセミナー/経営と営業の乖離【2/3】』ではこの結論で締め、最後のケースに移っていくことにします。

ディスカッションの産物

最後のケースに入る前に、今回のディスカッションで得られた大きな産物について紹介します。

ディスカッションを進めていくと、今回のようにあるテーマに対して意見の衝突や対立が起こることがあります。この衝突や対立を起こすことがディスカッションの大きな役割の一つです。

参加者はぶつけられた反対意見に対して、自らの主張で立ち向かおうとします。そこで、自分の主張の裏にある思考や価値観、経験などを探ることになります。すると、不思議なことに、裏にある背景とは別の何か(感情や偏見など)が表の主張に大きく影響していることに気付きます。今回の場合は、営業担当者としての観点がそれでした。

顧客の立場になって考えているつもりが、その主張の裏には営業担当者としての見方が含まれていたんです。

このように、ディスカッションは自分の無意識な思考に意識を向ける効果があります。他には、他者の意見を行くことで、思考や価値観が変わることもあります。これもディスカッションの良いところです。

経営と営業の乖離に立ち向かう

ということで、次回は『進化するセミナー/経営と営業の乖離【3/3】』。

今回の進化するセミナーを締めくくる内容となるため、これまでのディスカッションの論点から参加者たちが営業担当者の立場から経営と営業の乖離に立ち向かう姿を見届けていきましょう。

変化に挑むパートナーdarwin

青木 慎介

darwin/代表、株式会社三光電氣/経営企画室/室長。 鳥取大学医学部卒業、鳥取大学大学院医学修士課程修了、名古屋商科大学大学院経営学修士課程修了。 中小企業向けのコンサルティング会社を経て、2019年darwin創業。経営者の「変化したい」の想いに応えるため、アドバイザー/実行支援者として変化に直接的に関与。歴史ある中小企業や老舗旅館、建設会社などの支援を多く手掛ける中で、その企業の背丈にあった適切な変化を促し持続可能性と成長力を高めるノウハウと実績あり。

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